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内部統制・監査

自動仕訳を業務記述書・RCMに記載する方法|起票者の扱いと承認証跡の残し方

ルールやAIが作る仕訳は人が起票操作をしないため、業務記述書とRCMでは起票者の代わりにルールの設定者・承認者・証跡を書き分けます。

「自動仕訳を業務記述書・RCMに記載する方法」のイラスト
目次
  1. 自動仕訳の内部統制の範囲と本記事で確認した資料
  2. 内部統制基準・実施基準における自動仕訳の位置づけ
  3. 自動仕訳の起票者の扱い
  4. 統制の種類の区分
  5. 業務記述書への記載方法
  6. RCMの統制記述の文例
  7. 自動化された統制とIT全般統制の関係
  8. freee会計・マネーフォワードで残す承認証跡
  9. よくある質問
  10. 参考資料
この記事の要点

自動仕訳をJ-SOXの文書に書くときは、仕訳1件ごとの起票者の代わりに、ルールや指示文を設定した人、ルールの変更を承認した人、登録後の仕訳を承認した人の3つの役割を業務記述書に書き、RCMでは統制の種類を「自動化された統制」「ITによる情報を使用した統制」「手作業の統制」に分けて、頻度と証跡を1行ずつ対応させます。

金融庁の実施基準(令和5年4月7日改訂)は、自動化された内部統制について過年度の評価結果の利用をIT全般統制の有効性などの条件付きで認めています。承認証跡は、freee会計では仕訳承認フローと仕訳承認履歴、マネーフォワードではクラウド会計Plusの仕訳承認と仕訳履歴保存で残せます。

自動仕訳の内部統制の範囲と本記事で確認した資料

自動仕訳の内部統制とは、会計ソフトのルール機能や学習機能、生成AIが人の起票操作を経ずに仕訳を作成する業務について、ルールや指示文の設定と変更を誰が承認するか、作成された仕訳を誰が確認して帳簿に反映させるか、その記録をどこに残すかを定め、業務記述書とリスクコントロールマトリックス(RCM)に統制として記載した状態を指します。

本記事で原典として開いた資料は、金融庁の企業会計審議会が令和5年4月7日に公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(以下「基準」「実施基準」)とその新旧対照表、金融庁「内部統制報告制度に関するQ&A」(令和5年8月31日改訂)、経済産業省「システム管理基準 追補版(財務報告に係るIT統制ガイダンス)」(令和6年12月25日、以下「追補版」)、日本公認会計士協会の監査基準報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」(2024年9月26日最終改正)、freee会計とマネーフォワード クラウド会計の公式ヘルプです。会計ソフトの機能は2026年10月20日時点のヘルプの記載で確認しました。

自動仕訳と一口に言っても、仕訳を作る仕組みは同じではありません。摘要や金額の条件に合った明細を決まった科目で登録するルール型、過去の登録操作から科目を学習して候補を出す学習型、証憑や明細の内容から生成AIが仕訳案を作る生成AI型があり、どの型かで「誰が起票したことになるか」の整理が変わります。会計ソフトごとの機能名と設定項目はfreee会計とマネーフォワード クラウド会計のAI機能の記事にまとめました。

内部統制基準・実施基準における自動仕訳の位置づけ

基準のⅠ2(3)は、統制活動に権限及び職責の付与、職務の分掌等の広範な方針及び手続が含まれるとし、注で明確な職務の分掌と内部牽制を例に挙げています。自動仕訳では仕訳を作る主体がソフトやAIになるため、職務の分掌は「起票者と承認者を分ける」という形では書けません。代わりに、ルールを設定・変更できる人と、作成された仕訳を承認する人を分けることが、分掌の中身になります。

基準のⅡ2(1)は、経営者が内部統制の整備及び運用の方針と手続を定め、それらの状況を記録し保存しておかなければならないと定めています。記録の形式は基準で指定されていません。金融庁のQ&Aの問9は、実施基準が必ずしもフローチャート等の作成を求めているものではないと答えています。業務記述書とRCMは、記録の形式として実務で定着した様式という位置づけです。

実施基準のⅡ3(3)⑤ニbは、ITに係る業務処理統制の評価で確かめる点として、入力情報の完全性・正確性・正当性等の確保、エラーデータの修正と再処理の機能、マスタ・データの正確性、認証・操作範囲の限定などのアクセス管理の4点を挙げています。自動仕訳をRCMに書くときは、この4点に対応するリスクが一通り載っているかを確かめると漏れを減らせます。同じ項に書かれているのは、ITシステムに組み込まれていない手作業によるITに係る業務処理統制が存在する場合があること、自動化されたITに係る業務処理統制であっても過信せず、内部統制の無効化のリスクを完全に防ぐことは困難であるという視点を持つことの2点です。

実施基準Ⅱ3(3)⑤ニbの評価の観点自動仕訳で対応するリスク(編集部の整理)
入力情報の完全性・正確性・正当性銀行・カード明細の取込漏れや重複、ルールの条件誤りによる科目・税区分の誤り
エラーデータの修正と再処理ルールに合致しなかった明細が未処理のまま残る、推測された仕訳が確認されずに登録される
マスタ・データの正確性ルールや科目対応表の内容が承認を経ずに変更される
認証・操作範囲の限定などのアクセス管理権限のない担当者がルールを作成・変更できる、承認者が自分の仕訳を承認できる
出所:金融庁 実施基準Ⅱ3(3)⑤ニb(令和5年4月7日改訂)の評価の観点をもとに編集部が整理

自動仕訳の起票者の扱い

手作業の仕訳では、仕訳を入力した担当者が起票者で、承認者が別にいます。自動仕訳では仕訳1件ごとの入力操作がないため、業務記述書に「起票者」の欄をそのまま置くと空欄です。編集部の整理では、自動仕訳の型ごとに起票者に相当する役割を次のように置き換えます。

自動仕訳の型起票者に相当する人(編集部の整理)承認者起票に相当する記録
ルール型(条件に合う明細を決まった科目で登録)ルールを作成・変更した担当者作成された仕訳を承認する経理責任者ルールの作成・変更の申請と承認、仕訳に適用されたルールの表示
学習型(過去の登録操作から科目を学習して候補を提示)学習の元になった登録操作を行った担当者と、候補を確認して登録した担当者登録後の仕訳を承認する経理責任者登録操作の履歴、学習したルールの一覧
生成AI型(証憑や明細から仕訳案を生成)指示文・科目対応表・利用モデルを設定した担当者と、仕訳案を確認して登録した担当者登録後の仕訳を承認する経理責任者指示文と対応表の版、確認した件数と修正件数、登録操作の履歴
出所:編集部の整理

会計ソフトの画面にも、起票者の代わりになる表示があります。freee会計では、自動登録ルールで作成された取引の詳細画面で[利用したルール]を開くと適用されたルールを確認でき(ヘルプ「明細の自動登録ルールを設定する」更新日2026年9月8日)、仕訳承認フローを有効にしている場合は自動登録ルールによる仕訳が「申請中」のステータスで登録されます(ヘルプ「メンバーの記帳内容を承認制にする(仕訳承認フロー)」更新日2026年7月27日)。マネーフォワード クラウド会計では、自動仕訳ルールが適用された仕訳に学士帽のアイコンが表示され、アイコンから適用されたルールの画面に移動できます。仕訳帳画面でアイコンが表示されるのは2026年6月16日19時13分以降に登録された仕訳に限られます(サポート「仕訳に適用されている自動仕訳ルールを確認できるようになりました」2026年9月15日)。

マネーフォワード クラウド会計Plusの「承認仕訳一覧」画面は、未承認の仕訳に起票者、申請者、申請日を、承認済の仕訳に申請者、承認者、承認日を表示します(サポート「「承認仕訳一覧」画面の使い方」更新日2026年10月8日)。起票者と申請者を分けて持っている点は、業務記述書の役割分担をそのまま画面で示せるという意味で使いやすい設計です。

「自動仕訳を業務記述書・RCMに記載する方法」の内容を示す図
ルール設定者・自動仕訳・承認者の関係と、それぞれが残す記録の対応(イメージ)

統制の種類の区分

RCMの「統制の種類」欄は、自動仕訳の業務で最も迷う項目です。追補版は第Ⅱ章2(3)②で、IT業務処理統制を「自動化されていないIT業務処理統制」と「自動化されたIT業務処理統制」に分け、前者を業務処理に組み込まれた自動化された統制と人手による入力の確認作業で全体の統制を構築しているもの、後者を手作業を経ないで情報システムの内部に組み込まれたものと説明しています。第Ⅲ章4(1)②では、アプリケーション・システムに組み込まれた統制活動(自動化された統制活動)と、手作業とITが一体となって機能する統制活動(ITによる情報を使用した統制活動)という言い方で同じ区分を置いています。監査基準報告書315のA5項も、情報処理統制には自動化されている場合(ITアプリケーションに組み込まれている)と手作業の場合があるという区分です。

実務で使われる「IT依存の手作業統制」という呼び方は、追補版が「手作業とITが一体となって機能する統制活動」と括弧書きで説明する「ITによる情報を使用した統制活動」に対応する、というのが編集部の整理です。システムが出した一覧やステータスを人が見て判断する統制が、この区分に入ります。自動仕訳の業務で登場する統制を当てはめると次のとおりです。

統制の種類追補版の呼び方自動仕訳の業務での例運用評価で見る証跡
自動化された統制アプリケーション・システムに組み込まれた統制活動ルールの条件に合致しない明細は登録されない、承認者以外の仕訳は「申請中」で帳簿に反映されない、承認者が自分の仕訳を承認できない設定設定画面の内容、設定変更の履歴、関連するIT全般統制の評価結果
ITによる情報を使用した統制(IT依存の手作業統制)手作業とITが一体となって機能する統制活動「申請中」の仕訳一覧を承認者が確認して承認する、取込明細の件数・残高を銀行残高と照合する承認履歴、照合表に残る確認者と確認日
手作業の統制人手による確認作業推測された仕訳を担当者が証憑と突き合わせて登録する、ルールの変更申請を経理責任者が承認する証憑の添付、変更申請書の承認欄
出所:経済産業省「システム管理基準 追補版」第Ⅱ章2(3)②・第Ⅲ章4(1)②、日本公認会計士協会 監査基準報告書315 A5項をもとに編集部が整理。「IT依存の手作業統制」は実務上の呼び方

区分を間違えると評価の手続が変わります。自動化された統制と書けば、運用評価は設定内容と変更の有無の確認が中心になり、サンプルを抜いて1件ずつ見る手続は不要になる一方、関連するIT全般統制の評価が前提です。承認者が一覧を見て承認する統制を自動化された統制と書いてしまうと、承認者が実際に確認したことを示す証跡が評価から抜け落ちます。

業務記述書への記載方法

業務記述書は、業務の流れを時系列で文章にした文書です。追補版の第Ⅲ章2(3)は、業務の流れ図を作成してデータの流れを把握すると分かりやすいと述べています。自動仕訳の業務では、明細の取込、ルールの適用、人の確認、承認、帳簿への反映の順に書き、各段階で誰が何を見て何を記録するかを入れます。次の文例は編集部が作成したもので、担当者名と頻度は架空です。

業務記述書の文例(数値は架空)

1. 銀行口座とクレジットカードの明細は、会計ソフトの金融機関連携により毎営業日に自動取得される。経理担当者Aは毎週金曜日に、取得された明細の件数と残高を金融機関の画面と照合し、照合表に件数・残高・差異の有無・確認日を記録する。

2. 取得された明細には、経理責任者Bが承認した自動登録ルールが適用される。ルールの新規作成と変更は、経理担当者Aが変更申請書に条件・科目・税区分・変更理由を記入し、経理責任者Bが承認した後にAが会計ソフトに登録する。ルールの登録・更新・削除の権限は、カスタム権限でAとBに限定している。

3. ルールにより登録された仕訳は、仕訳承認フローにより「申請中」のステータスとなり、帳簿には反映されない。経理責任者Bは毎週月曜日に「申請中」の仕訳を仕訳帳で絞り込み、適用されたルール、科目、税区分、金額を確認して承認する。Bが作成した仕訳は、自己承認を不可とする設定により、取締役Cが承認する。

4. ルールに合致せず推測のみ行われた明細は、経理担当者Aが証憑と突き合わせて科目と税区分を決めて登録し、同じ承認フローで経理責任者Bが承認する。

5. 承認の記録は会計ソフトの仕訳承認履歴に残り、ルールの変更の記録は変更申請書と仕訳設定変更履歴に残る。

書き方で気をつける点は2つあります。1つは、「自動で登録される」で終わらせず、登録の条件を決めた人と変更の承認者を書くことです。もう1つは、人が確認する段階について、確認の対象(申請中の仕訳一覧)、確認の観点(ルール・科目・税区分・金額)、頻度、記録の場所を文章の中に入れることです。確認の観点が書かれていないと、運用評価で「承認ボタンを押したことは分かるが、何を見たかは分からない」という指摘になります。

RCMの統制記述の文例

RCMは、リスクごとに統制活動、統制の種類、頻度、証跡を1行で対応させる表です。業務記述書の文例に対応するRCMの行を、編集部が作成しました。統制番号と頻度は架空です。

No.リスク統制活動統制の種類頻度実施者証跡
AJ-1金融機関の明細が取込漏れ・重複し、仕訳が網羅的に作成されない取得された明細の件数と残高を金融機関の画面と照合し、差異を記録するITによる情報を使用した統制週次経理担当者明細照合表(件数・残高・差異・確認日)
AJ-2自動登録ルールの条件・科目・税区分の誤りにより、誤った仕訳が継続的に作成されるルールの新規作成・変更は変更申請書で経理責任者が承認した後に登録する手作業の統制都度経理責任者変更申請書の承認欄、仕訳設定変更履歴
AJ-3権限のない担当者がルールを作成・変更する自動登録ルールの登録・更新・削除の権限を経理担当者と経理責任者に限定する自動化された統制常時(設定は年1回棚卸)システム管理者カスタム権限の設定一覧、権限棚卸の記録
AJ-4ルールにより作成された仕訳が確認を経ずに帳簿に反映される仕訳承認フローにより承認者以外が登録した仕訳を「申請中」とし、承認後に帳簿へ反映する自動化された統制常時会計ソフト仕訳承認フローの設定画面、承認ステータス
AJ-5承認者が仕訳の内容を確認せずに承認する「申請中」の仕訳について、適用ルール・科目・税区分・金額を確認して承認するITによる情報を使用した統制週次経理責任者仕訳承認履歴(承認者・承認日)、確認観点を記したチェック表
AJ-6承認者が自分で作成した仕訳を自己承認する自己承認を不可とする設定により、承認者の仕訳は上位者が承認する自動化された統制常時会計ソフト自己承認設定の画面、設定変更の履歴
AJ-7ルールに合致しない明細が未処理のまま残り、期間帰属を誤る月次決算の締め前に未登録明細の一覧を確認し、全件を登録または無視の処理にするITによる情報を使用した統制月次経理担当者未登録明細一覧の確認記録(件数ゼロの確認日)
出所:編集部作成の記入例(数値・番号は架空)

AJ-4とAJ-5は、同じ承認フローを自動化された部分と人が確認する部分に分けて2行にしています。1行にまとめると、設定の確認で済む部分と承認者の確認を確かめる部分が混ざり、運用評価の手続が決まりません。AJ-3のような権限設定は、設定した時点で機能し続ける統制なので頻度を「常時」とし、権限の棚卸を別の頻度で添えています。

生成AI型の仕訳案を使う場合は、AJ-2のルールを「指示文・科目対応表・利用モデル」に読み替えた行と、仕訳案を確認した件数と修正件数を記録する行を加えます。生成AIの出力は同じ入力に同じ出力を返すとは限らないため、ルール型と同じ「自動化された統制」の扱いにはできません。人が承認する運用とAIの出力がそのまま確定する運用の区分と、残す記録は経理のAI活用と内部統制の記事で整理しています。

自動化された統制とIT全般統制の関係

実施基準のⅡ3(3)⑤イは、ITの統制が全般統制と業務処理統制に分けられ、経営者は両者を評価する必要があるとし、全般統制が有効に機能していると評価されたとしても、それだけでITに係る業務処理統制も有効に機能しているという結論には至らないと注意を促しています。追補版の第Ⅱ章1(4)④は反対の方向からの記述で、全般統制が有効に機能しない場合には適切な業務処理統制を組み込んだとしてもその有効性が保証されなくなる可能性がある、という内容です。自動仕訳のRCMに「自動化された統制」の行を置くなら、その統制が載っている会計ソフトのIT全般統制の評価が対になります。

実施基準のⅡ3(3)⑤ニaが挙げる全般統制の評価の観点は、システムの開発・保守、システムの運用・管理、内外からのアクセス管理などのシステムの安全性の確保、外部委託に関する契約の管理の4つです。クラウド会計ソフトを使う会社では、開発・保守と運用・管理の大部分はベンダー側にあり、会社側で評価する対象はアクセス管理(アカウントと権限の付与・削除・棚卸)と、ベンダーとの契約・保証報告書の確認が中心になります。自動登録ルールの変更管理は、アプリケーションの設定変更として会社側の全般統制に含めるか、業務処理統制の行(AJ-2)に置くかを決めておきます。どちらに置いても、変更前の承認と変更後の確認が記録に残ることが評価の対象です。

実施基準のⅡ3(3)⑤ニcは、ITを利用して自動化された内部統制について、一度内部統制が設定されると変更やエラーが発生しない限り一貫して機能するという性質を前提に、過年度の評価結果を利用できる条件を4つ示しています。

過年度の評価結果を利用する条件(実施基準Ⅱ3(3)⑤ニc)自動仕訳で用意する記録(編集部の整理)
過年度に不備が発見されずに有効に運用されていると評価されたこと前年度のRCMと運用評価の結果
評価された時点から内部統制が変更されていないこと仕訳承認フロー・権限・自己承認設定の変更履歴に変更がないことの確認
障害・エラー等の不具合が発生していないことベンダーの障害情報と社内の不具合記録
関連する全般統制が有効に機能していると判断できること当年度のIT全般統制(アクセス管理・委託先管理)の評価結果
出所:金融庁 実施基準Ⅱ3(3)⑤ニc(令和5年4月7日改訂)をもとに編集部が整理

実施基準は、これらの条件を満たす場合にその結果を記録することで評価結果を継続して利用できるとし、注で複数会計期間に一度の運用テストも認めつつ、特定の年数を機械的に適用すべきものではないと付け加えています。ルール型の自動仕訳はこの性質に当てはまりますが、生成AI型はモデルの更新で出力が変わるため、「変更されていないこと」を会社側で示せません。上場準備の段階で評価範囲や評価方法を決めるときの監査法人との協議の進め方は、上場準備企業の経理AI導入の記事に書きました。

freee会計・マネーフォワードで残す承認証跡

RCMの証跡欄に書いた記録が、会計ソフトの機能として実際に残るかを確かめておきます。2026年10月20日時点の公式ヘルプで確認できる範囲を表にしました。

証跡freee会計マネーフォワード クラウド会計/クラウド会計Plus
自動仕訳の承認ステータス仕訳承認フローを有効にすると、自動登録ルールによる仕訳と他社APIから連携された仕訳は「申請中」になり、承認後に「承認済み」になる。対象は法人のアドバンス・エンタープライズ(旧プロフェッショナル・エンタープライズ)クラウド会計Plusの仕訳承認機能で、承認者が承認した仕訳が帳簿に反映される。承認仕訳一覧は未承認・承認済・差戻しの3タブ。クラウド会計には仕訳承認機能がない
承認者・承認日の記録仕訳帳の「仕訳承認履歴」で作成・一次承認・最終承認の操作を確認できる。差し戻しは実行日時と実行ユーザーが仕訳単位で残るクラウド会計Plusの承認済タブに申請者・承認者・承認日が表示される。仕訳ごとに誰がいつ登録・申請・更新・承認・削除したかの履歴を確認できる
自己承認の制限エンタープライズプランのみ自己承認を不可に設定できる。設定しない場合、承認者が登録した仕訳は「承認済み」になるクラウド会計Plusでは自身が申請者に含まれる仕訳を承認できない
ルールの変更権限カスタム権限で自動登録ルールの参照・登録・更新・削除を個別に設定できる自動仕訳ルールは「連携サービスから入力」画面で仕訳候補を登録すると更新される。編集権限についてのヘルプの記載は確認できない
仕訳に適用されたルールの表示取引の詳細画面の[利用したルール]学士帽のアイコンから適用ルールの画面に移動できる(仕訳帳では2026年6月16日19時13分以降の登録分)
仕訳の変更履歴仕訳帳の[履歴]と[その他設定]→[仕訳関連履歴]で変更履歴・設定変更履歴を確認できる。対象はエンタープライズ「仕訳履歴保存」機能で登録・訂正・削除の履歴を確認できる。会計年度ごとに有効化し、仕訳が1件以上ある年度では有効にできない。対象はビジネスプラン
出所:freee ヘルプセンター「メンバーの記帳内容を承認制にする(仕訳承認フロー)」「仕訳の承認履歴/変更履歴を確認する」「メンバーが利用できる機能を編集する(カスタム権限)」「明細の自動登録ルールを設定する」、マネーフォワード クラウド会計/クラウド会計Plusサポート「クラウド会計とクラウド会計Plusの違い」「「承認仕訳一覧」画面の使い方」「「仕訳履歴保存」機能の使い方」「「自動仕訳ルール(通帳カード)」画面の使い方」(2026年10月20日確認)をもとに編集部が整理

マネーフォワード クラウド会計の自動仕訳ルールにある「自動登録」のチェックは、チェックを入れたルールが適用された仕訳候補を「クイック登録(β)」で一括登録できるようにする設定で、人の操作なしに仕訳が登録される設定ではありません(サポート「「自動仕訳ルール(通帳カード)」画面の使い方」更新日2026年8月18日)。クラウド会計で承認の段階を置く場合、仕訳候補を登録する担当者と、登録後の仕訳を確認する人を分け、確認の記録を仕訳履歴保存の履歴と別に残す運用になります。

freee会計の仕訳承認フローは、一度承認した仕訳を申請中に戻せません。誤って承認した場合は修正仕訳を登録することになるため、RCMのAJ-5の統制活動には、承認前に確認する観点を書き、承認後の訂正は修正仕訳と変更履歴で追う旨を業務記述書に添えておきます。マネーフォワード クラウド会計Plusも、承認済みの仕訳は削除や編集ができない仕様です。承認を取り消せない設計は、証跡の改ざん防止という点では統制の強さになる一方、承認者の確認の観点を事前に決めておく必要を高めます。

よくある質問

自動仕訳の業務記述書で起票者の欄には何を書けばよいですか。

仕訳1件ごとの起票操作がないため、起票者の欄には自動登録ルールや指示文を作成・変更した担当者を書き、ルールの変更を承認する人と、登録された仕訳を承認する人を別に書きます。マネーフォワード クラウド会計Plusのように起票者と申請者を分けて表示する画面があれば、その表示をそのまま証跡に使えます。

ルールで自動登録される仕訳の統制は、RCMで自動化された統制と書いてよいですか。

ルールの条件に合わない明細が登録されない機能や、承認者以外の仕訳が申請中で止まる設定は、システムに組み込まれた統制なので自動化された統制です。一方、承認者が申請中の仕訳を確認して承認する行為は、手作業とITが一体となって機能する統制(実務でいうIT依存の手作業統制)に当たるため、別の行に分けて書きます。

自動化された統制は毎年テストしなくてよいのですか。

実施基準Ⅱ3(3)⑤ニcは、過年度に不備なく有効と評価され、その後変更されておらず、障害やエラーがなく、関連するIT全般統制が有効と判断できる場合に、結果を記録したうえで過年度の評価結果を継続利用できるとしています。生成AIが作る仕訳案はモデルの更新で出力が変わるため、変更されていないことを示せず、同じ扱いにはできません。

freee会計で自動登録ルールによる仕訳の承認証跡はどこに残りますか。

仕訳承認フローを有効にすると自動登録ルールによる仕訳は申請中になり、承認後の記録は仕訳帳の仕訳承認履歴で確認できます。差し戻しは実行日時と実行ユーザーが仕訳単位で残ります。自己承認を不可にする設定はエンタープライズプランのみで、他のプランでは承認者が登録した仕訳は承認済みになります。

参考資料

  1. 金融庁 企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」令和5年4月7日(基準Ⅰ2(3)、Ⅱ2(1)) (最終確認 2026年10月20日)
  2. 金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準(抄)新旧対照表」令和5年4月7日(実施基準Ⅱ3(3)⑤イ・ニa・ニb・ニc) (最終確認 2026年10月20日)
  3. 金融庁「内部統制報告制度に関するQ&A」令和5年8月31日改訂(問9) (最終確認 2026年10月20日)
  4. 経済産業省「システム管理基準 追補版(財務報告に係るIT統制ガイダンス)」令和6年12月25日(第Ⅱ章1(4)④・2(3)②、第Ⅲ章2(3)・4(1)②) (最終確認 2026年10月20日)
  5. 日本公認会計士協会 監査基準報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」2024年9月26日最終改正(第11項、A5項) (最終確認 2026年10月20日)
  6. メンバーの記帳内容を承認制にする(仕訳承認フロー)(freee ヘルプセンター、更新日2026年7月27日) (最終確認 2026年10月20日)
  7. 仕訳の承認履歴/変更履歴を確認する(freee ヘルプセンター、更新日2025年12月16日) (最終確認 2026年10月20日)
  8. メンバーが利用できる機能を編集する(カスタム権限)(freee ヘルプセンター、更新日2026年4月16日) (最終確認 2026年10月20日)
  9. 明細の自動登録ルールを設定する(freee ヘルプセンター、更新日2026年9月8日) (最終確認 2026年10月20日)
  10. 「マネーフォワード クラウド会計」と「マネーフォワード クラウド会計Plus」の違いを教えてください。(マネーフォワード クラウド会計Plusサポート、更新日2026年7月6日) (最終確認 2026年10月20日)
  11. 「承認仕訳一覧」画面の使い方(マネーフォワード クラウド会計Plusサポート、更新日2026年10月8日) (最終確認 2026年10月20日)
  12. 「仕訳履歴保存」機能の使い方(マネーフォワード クラウド会計サポート、更新日2025年8月27日) (最終確認 2026年10月20日)
  13. 「自動仕訳ルール(通帳カード)」画面の使い方(マネーフォワード クラウド会計サポート、更新日2026年8月18日) (最終確認 2026年10月20日)
  14. 「連携サービスから入力」画面と「仕訳帳」画面で仕訳に適用されている自動仕訳ルールを確認できるようになりました(マネーフォワード クラウド会計サポート、2026年9月15日) (最終確認 2026年10月20日)

本記事は2026年10月20日時点で確認できた法令・資料に基づいています。個別の取引への当てはめは、顧問税理士や監査法人と確認してください。

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