AI経理のはじめかた / 実務ガイド 01
AI経理、
どこから始める?
請求書1枚から始める、最初の1か月の手順書
毎月届く請求書を1枚、AIに読ませるところから。道具・契約・置き場をそろえ、4週間で一巡させるまでを、実際の画面と例でたどります。
はじめに / このガイドについて
管理部でAIを使うと、作業がレビューに変わる
読む・判定する・作る・照合するをAIに任せると、人の仕事は確認と承認に変わります。このガイドは、その最初の1か月を請求書処理でたどります。
こんな方へ

IPO準備企業の経理担当・管理部長
毎月の入力と照合に追われている。作業を減らし、確認と改善に時間を使いたい。

経営者・CFO/一人経理
AIは役立ちそうだが、使いどころが分からない。任せられる仕事を見つけ、まず試したい。
読み終えると決まること
このガイドの流れ
取引先・帳票・金額はすべて架空例です。「月2日→レビュー1〜2時間」は著者の運用例で、成果を保証するものではありません。
はじめに / 避けたいこと
最初に避けたい3つの進め方
始める前・始めるとき・結果が出たあとで、避けたいことが1つずつあります。どれも「小さく始めて、人が確かめる」に戻せば防げます。
小さく始めて、出力は人が確かめる。
00 / はじめの一歩 AIでできること
AIで、経理の何ができるか ― 請求書1枚で見る5つの作業
AIは資料を読み、自社のルールで判定し、取込データを作り、資料どうしを照らして計算し直すところまでできます。タブを切り替えると、架空の請求書1枚でそれぞれの例が見られます。
01 読む
「読む」の例
契約の条件を、会計の予定に落とす
| 読んだ条件 | 会計での扱い |
|---|---|
| 期間 12か月 | 毎月、費用を計上する |
| 33,000円/月 | 税込額。消費税3,000円を区分 |
| 翌月末払い | 月末に未払計上、翌月末に支払 |
| 自動更新 | 2027年2月末に更新・解約を確認 |
請求書なら日付・取引先・金額・税額を一覧に。読めない値は推測で埋めず、保留にします。
02 判定する
「判定する」の例
根拠を添えて、科目の候補を出す
R-012「システムの月額利用料」に該当
✓ 条件に合う
どのルールにも当てはまらないものは、「要確認」として人に回します。
03 作る
「作る」の例
会計ソフトに渡す一覧を作る
| 日付 | 取引先 | 科目 | 税込 |
|---|---|---|---|
| 08-05 | 青葉商事 | 通信費 | 33,000 |
| 08-18 | みなとシステム | 支払手数料 | 55,000 |
| 08-31 | 東雲オフィス | 要確認 | 8,800 |
列順は会計ソフトの取込仕様に合わせます。決まらない行は空欄のまま要確認へ。
04 突合する
「突合する」の例
同じ取引の差額を見つける
消費税が仕訳に入っていない可能性 → 理由を添えて要確認へ。金額だけで同じ取引と決めません。
05 検算する
「検算する」の例
計算し直して、合計と比べる
✓ 記載の請求額と一致。検算は金額の整合を見る作業で、科目の正しさは別に確かめます。
00 / はじめの一歩 AIと人の役割
AIと人の役割 ― 作業はAIに、判断と承認は人に
請求書1枚の流れで見ると、人が手を動かすのは入口・要確認・出口の3か所だけになります。
読む・候補を出す・作る・照らし合わせるはAIの作業。AIは根拠を添えて渡し、人は確かめて決めます。
- 件数が多く、毎月くり返す
- 手順を文章で書ける
- 合計や原本で確かめられる
- ルールにない例外
- 支払・登録など、取り返しのつかない操作
- 説明責任がともなう承認
00 / はじめの一歩 最初の業務
請求書処理から始める、3つの理由
届いた請求書の処理から始めましょう。毎月あるので、手順を育てやすい業務です。P.04の5つの作業も、すべてこの業務に含まれます。
- 毎月必ずある
今月つくった手順を、来月すぐに試せる。年12回、直す機会がある。
- 読み取る項目が共通している
届く形式が違っても、取引先・日付・金額・税額は共通。同じ手順を繰り返し使える。
- 変化を時間で実感できる
準備・処理・レビューの時間を月ごとに比べられる。効果を数字で説明できる。
著者の運用例 / 月◯◯件の請求書処理にかかった人の作業時間
著者の運用例です。レビュー時間と全作業時間は分けて考えてください。
01 / 請求書処理を回す 実際の流れ
実際の請求書処理 ― 1か月分をこう回す
8月分の請求書10件(架空)を例に、最初の1か月の処理を順に追います。人がやるのは、集めて頼む・要確認を見る・承認する。あいだの作業はAIがまとめて行います。
01 集める(人)
- PDFINV-0805_青葉商事.pdf
- PDFINV-0812_港通信.pdf
- PDFINV-0818_みなとシステム.pdf
- PDFINV-0820_北浜運送.pdf
- PDFINV-0831_東雲オフィス.pdf
- ほか5件(計10件)
人がやること
届いた請求書を、フォルダに集める
- メールの添付・Webでダウンロードしたもの・紙をスキャンしたものを1か所へ
- ファイル名は「請求書番号_取引先」にそろえる
- まだ届いていないものは、未回収として一覧に残す
できるもの対象月の請求書10件がそろったフォルダ
02 頼む(人)
2026-08 フォルダの請求書をすべて読み、日付・取引先・金額・税額を一覧にしてください。判定ルール表を参照して科目の候補と根拠のルールIDを添え、会計ソフトの取込一覧を作ってください。明細合計と税額を計算し直し、合わないもの・読めないもの・ルールにないものは、理由をつけて要確認リストに分けてください。読めない値は推測で埋めないでください。
人がやること
1回の依頼で、まとめて頼む
- 何を読み、何を作り、何を確かめるかを1つの文章で伝える
- 最初は架空の請求書1枚で試してから、実データへ
- うまくいった依頼文は、翌月も使えるよう「スキル」に保存する(P.08)
03 AIが作る(AI)
取込一覧(8行)と要確認リスト(2件)を作りました。要確認:INV-0805 は仕訳との差額3,000円、INV-0831 はルールに当てはまる科目がなく、税額が読めません。
AIがやること
5つの作業を続けて行い、結果をまとめて返す
それぞれの作業の例は P.04。AIは会計ソフトに書き込まず、下書きを作るところまで。
できるもの取込一覧・要確認リスト(理由つき)
04 見る(人)
| 請求書 | 理由 | 人の判断 |
|---|---|---|
| INV-0805 | 仕訳との差額 3,000円 | 消費税の入れ漏れと判断 → AIに仕訳の修正を指示 |
| INV-0831 | 科目の候補なし・税額が読めない | 原本で科目を決め → AIにルール表へ1行足させる |
人がやること
10件ではなく、要確認の2件を見る
- 理由を読み、原本と見比べて判断する
- 直す内容はAIに指示して修正させる(例:「INV-0805は消費税を含めて仕訳を直して」)
- 判断した内容をルール表に1行足すようAIに頼み、翌月は候補が出るようにする
- 一致した8件からも、いくつかを原本と照合する
05 取り込む・承認(人)
人がやること
取込一覧を会計ソフトに入れ、承認する
- 取込と支払は人が行う。AIには書き込み権限を渡さない
- 承認者・承認日・直した理由を処理記録に残す
- 処理にかかった時間も記録し、翌月と比べる
どうなるか人の手元に残るのは、要確認の判断・サンプル確認・承認だけ
01 / 請求書処理を回す 手順を育てる
直した科目は次からルールに、うまくいった手順はスキルに
1か月回したら、直したことを2つの形で残します。ルールは「何を根拠に判断するか」、スキルは「どの順番で何をするか」。2つがそろうと、翌月はAIが同じ品質で処理します。
①直した科目は、次からルールに
R-014|みなとシステムの定額利用料 → 通信費|対象外:導入費用・機器代|適用日 2026-09-01②うまくいった手順は、スキルに
スキルに入る5つの要素入力(どの資料)/手順(どの順番)/判定ルール(何を根拠に)/チェック(何を確かめる)/出力(どんな形で)
AIはルール表を根拠に科目の候補を出し、スキルの順番で処理する。人は「8月と同じように、9月分をお願い」と頼むだけ。
02 / 道具と準備 使うAI
使うAIは何でも大丈夫 ― 迷ったらClaudeがおすすめ
このガイドの手順は、どのAIでもそのまま使えます。ChatGPTでも、会社で決まっているAIでも構いません。まだ決めていなければ、経理で使いやすいClaudeをおすすめします。
freee・マネーフォワードが、Claude向けの接続手順を案内している
うまくいった依頼文と手順を「スキル」として残し、翌月も呼び出せる
契約書・規程・明細をまとめて読み、どこを読んだかを示して返す
ほかのAIを使う場合は、名前を読み替えるだけ
| 外部データにつなぐ | 手順を保存して繰り返す | 会社で管理するプラン | 個人の有料プラン | |
|---|---|---|---|---|
| Claude | コネクタ | スキル・プロジェクト | Team/Enterprise | Pro/Max |
| ChatGPT | アプリ(コネクタ) | GPTs・プロジェクト | Business/Enterprise | Plus/Pro |
どのAIでも、まずは請求書1枚から。Claudeを使えない場合の進め方も、相談できます。
操作例はClaudeで書いています。公式情報確認:2026年10月16日。対応範囲・名称はプランと時期で変わります。
02 / 道具と準備 道具は増やさない
道具は増やさない ― 足すのはAIと、2つの文書だけ
AIを使うために、新しいサービスを入れる必要はありません。会計ソフトも、承認の流れも、資料の置き場もいまのまま。足すのは、AIと、AIが参照する2つの文書です。
いまのまま変えない・会社ごとに違ってよい
- 会計ソフトいま使っているもの
- 申請・承認の流れいまのワークフローや紙の承認
- 資料の置き場いまの共有フォルダ
足すのはこれだけAIと、AIが参照する2つの文書
- AI使うAIを1つ(P.09)
- 判定ルール表「この取引はこの科目」を1行ずつ。スプレッドシート1枚
- 手順書(スキル)どの順番で何をするか。うまくいった依頼文から作る
新しいサービスを足すたびに、データの置き場・設定・覚えることが増えます。ルール表と手順書なら、AIや道具を替えても、やり方が会社に残ります。
判定ルール表の例スプレッドシート
| ID | 条件 | 科目 |
|---|---|---|
| R-012 | システムの月額利用料 | 通信費 |
| R-013 | 振込手数料(当社負担) | 支払手数料 |
| R-020 | 事務所の月額賃料 | 地代家賃 |
手順書(スキル)の例文章1枚
- 入力対象月の請求書フォルダ・判定ルール表
- 手順読む → 判定 → 作る → 突合 → 検算
- 出力取込一覧・要確認リスト(理由つき)
02 / 道具と準備 契約
業務で使うなら、有料プランが前提
無料プランで会社の情報は扱いません。複数人で使うなら法人プラン、まず一人で試すなら会社の許可を得て個人の有料プランから始め、人数が増えたら法人プランへ移します。
法人プラン
Claude Team / Enterprise
- 業務データは標準で学習対象外個人ごとの設定に頼らずに済む
- 利用者・権限・請求を会社で管理異動・退職時のアクセス解除も会社側でできる
- Teamは2人から150人までそれ以上や統制の要件が強い場合はEnterprise
- 管理者を先に決める招待・削除・利用上限の設定を担当する人
最初の操作:管理者を決め、メンバーを一人ずつ招待する
個人の有料プラン+会社の許可
Claude Pro / Max
- 「AIモデルの改善にご協力ください」をオフ有料でも、学習への利用は設定で止める
- 最初は架空データで試す実データは、許可と設定の確認が済んでから
- 個人アカウントを共有しない同僚と使うなら、その時点で法人プランへ
- 移るときは正本ごと手順書・判定ルール・成果物を会社の共有フォルダへ
最初の操作:設定 → プライバシーで、学習への利用をオフにする
プラン名は2026年10月16日時点。有料契約と学習設定は別のものです。保存・共有・権限は次のページで確認します。
02 / 道具と準備 情報
会社の情報を守る4つの設定
「学習に使われない」だけでは足りません。学習・保存・権限・出力先の4つを決めてから、実データを入れます。最初の1か月は、架空データと検証用フォルダで十分です。
学習:入力した情報がAIの改善に使われない
入力した会社の情報が、AIの改善(学習)に使われる可能性がある
法人プランを使う。個人プランなら「モデルの改善への協力」をオフにする
保存:会話とファイルがどこに、いつまで残るか
会話や添付ファイルが、サービス側に一定期間残る
保存期間と削除方法を確認し、終わった会話の扱いを社内ルールに合わせる
権限:AIから見える範囲を絞る
つないだフォルダやアカウントの中身は、AIからすべて見える
検証用のフォルダだけをつなぐ。給与・人事のフォルダはつながない
出力先:作ったものが渡る相手を限る
共有リンクや外部への送信で、意図しない相手に渡る
成果物は社内の共有フォルダに保存し、公開リンクは使わない
実データを入れる前に、5つを確認
- 社内のAI利用ルールと、使ってよい情報の範囲
- 学習への利用がオフ(または法人契約の範囲内)
- つないだのは経理の検証用フォルダだけ
- AIの出力の保存先が、原本とは別に決まっている
- 給与・口座などの個人情報は、最初の1か月は入れない
02 / 道具と準備 準備
準備は5ステップ ― 慣れていれば1時間
プログラミングは要りません。契約・アプリ・置き場・設定を決めて、架空の請求書1枚を読ませるところまでで、準備は完了です。
会社の許可を得て、チームはTeam、一人ならPro。個人プランは学習への利用をオフ。
累計 15分claude.com/download からClaude Desktopを入れて、ログインする。
累計 20分共有フォルダを「設定 → コネクタ」で接続。検証用フォルダだけ。つなげなければ添付でよい。
累計 35分学習・保存・権限・出力先を、それぞれの設定画面で確かめる。
累計 45分P.07の依頼文で1枚読ませ、返ってきた内容を原本と見比べる。
累計 60分あとでいいこと
- 会計ソフトとの接続:最初はCSVの書き出しと取込で一巡できる。2か月目以降でいい
- スキルづくり:1か月回してから、AIに頼んで作る(P.08)
- 完璧なフォルダ設計:「原本」と「AIの出力」を分けるだけで始められる
詰まったら
設定画面・会計ソフトとの接続・スキルの作り方は、別途ご案内します。まずは架空の請求書1枚を読ませるところまでで十分です。詰まったら、P.16からご相談ください。
03 / 次へ
次の業務も同じ型で広げる
請求書で一巡したら、支出系 → 人件費系 → 収入系 → 決算・統制系の順に、一業務ずつ広げます。流れは請求書と同じ「集める → 頼む → 見る → 承認」。変わるのは、集める資料と見るポイントだけです。
支出系:カード明細・立替経費
カード明細・領収書・立替の申請
明細と領収書を照合し、判定ルールで仕訳の候補を作る
重複・領収書の不足・私的利用の疑い
承認し、直したことをルール表に1行
人件費系:確定済み給与の仕訳
確定した給与・賞与の一覧
部門ごとに集計し、仕訳の形に整える
見られる人の範囲・部門への配賦・計上月
承認し、直したことをルール表に1行
収入系:未入金リスト
請求の一覧・入金明細
請求と入金を照合し、一致しないものを一覧にする
名義の違い・まとめての入金・振込手数料
承認し、直したことをルール表に1行
決算・統制系:月次締めの確認
締めのチェック項目・残高の資料
項目ごとに確認結果と根拠を一覧にする
完了の条件・証跡・確認した人
承認し、直したことをルール表に1行
業務ごとの詳しいやり方は、順次ご案内します。どの業務から広げるか迷ったら、ご相談ください。
明日の一歩 / 準備チェック
明日からの準備チェックリスト
最初の1行は「試す業務と請求書を選ぶ」。できたところから印を付けてください。チェックはこのブラウザ内にだけ保存されます。
迷ったら
P.07の依頼文をコピーして、架空の請求書1枚で試すところから。
03 / 次の一歩
AIで、バックオフィスを理にかなった方法に
このガイドだけで回せる会社は、そのまま進めてください。月次が遅い、人はいるのに忙しい、辞めたら回らない。ひとつでも心当たりがあるなら、AIを軸にバックオフィス全体を設計し直すのが早道です。作業はAIに、判断は人に。その形を一緒につくります。
- 監査法人と主幹事証券会社で上場準備に携わった公認会計士が担当
- 手を動かして伴走。手順書とルールの正本は自社に残す
- オンラインで完結。まずは30分の無料相談から
まだ漠然としていても、なんでもご相談ください。

公認会計士
監査法人のIPO部門と主幹事証券会社の公開引受部を経て、上場準備企業の内部統制・会計論点・開示書類の作成を支援しています。AIを入れたあとの内部統制や、監査法人への説明もあわせてご相談いただけます。
- 前職監査法人 IPO部門
- 前職主幹事証券会社 公開引受部
- 現在株式会社プライムコンサルティング 代表取締役
- 実績上場準備の支援 数十社
AIで回る形を、自社で続けられるまで一緒につくります。