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AI経理の基礎

AI経理とは|自動仕訳・AI-OCR・生成AIの役割と人が確認する範囲

AI経理の定義と、技術ごとの用途、工程ごとにAIへ任せる処理と人が承認する処理をまとめました。

領収書の束から処理を経て帳簿へ流れ、担当者が帳簿を確認しているイラスト
目次
  1. AI経理の定義
  2. AI経理を構成する技術と用途
  3. 会計ソフトに組み込まれたAI機能の例
  4. 経理の工程ごとのAIの適用範囲
  5. AI-OCRで読み取った証憑の保存区分
  6. IT統制ガイダンスとAI事業者ガイドラインの記載
  7. 導入前に決める項目
  8. よくある質問
  9. 参考資料
この記事の要点

AI経理は、証憑の読み取り、仕訳の候補作成、照合、文書の下書きといった経理業務の一部をAIで処理する仕組みの総称です。AIが担うのは入力と分類の下準備が中心で、仕訳の確定や会計上の判断は、確認の範囲と記録を決めたうえで権限を持つ担当者が行います。

AI経理の定義

AI経理とは、AI-OCR、機械学習、生成AIなどの技術を使って、経理業務の入力・分類・照合・文書作成を省力化する取り組みを指します。

会計ソフトの自動仕訳ルールのように、人が条件を決めて機械が同じ処理を繰り返す仕組みは以前からありました。AI経理では、過去の仕訳や証憑の記載内容からAIが勘定科目や取引先を推定するため、人が条件を決めていない取引にも候補が出ます。

推定である以上、出力には誤りが含まれます。AI経理を設計するときは、AIに何を任せるかと同時に、誰がどの範囲を確認し、その記録をどこに残すかも決めておくことが必要です。

AI経理を構成する技術と用途

AI経理で使われる技術は、得意な処理も誤りの出方も異なります。生成AIに仕訳の正確さを求めるような使い方を避けるため、技術ごとの用途を表にしました。

技術経理での主な用途出力の性質人が確認する点
AI-OCR請求書・領収書の日付、金額、取引先の読み取り画像から抽出した文字データ。手書き、かすれ、非定型の帳票で読み違いが増える金額・日付・登録番号の読み違い
仕訳推定(機械学習)勘定科目、税区分、補助科目の候補提示過去の仕訳の傾向に沿った推定。新しい取引や例外的な取引で外れやすい科目・税区分、按分、資産計上の要否
生成AI問い合わせへの回答案、取引内容の要約、説明資料の下書き文章として自然でも、数値や条文番号の正確性は保証されない数値、基準・条文番号、事実関係
AIエージェント会計ソフトや経費精算システムを操作して起票・照合を進める複数の手順を続けて実行する。付与した権限の範囲で処理が確定することがある付与した権限、確定前の承認の有無
出所:編集部の整理

生成AIの文章は読みやすいため、数値や条文番号の誤りを見落としやすくなります。開示資料や監査法人への説明資料の下書きに使う場合は、数値を会計データと、条文を原典と照合してください。

会計ソフトに組み込まれたAI機能の例

仕訳推定とAI-OCRは、会計ソフトの標準機能として提供されるものが増えています。以下は、2026年10月20日時点の公式ヘルプで確認できる2社の例です。

freee会計の「自動登録ルール」は、収支区分・取引口座・取引内容・金額・優先度を条件に、明細を「推測する」か「登録する」かを選んで設定します。「登録する」を選ぶと、未登録の明細にルールが自動で適用され、人の操作なしに取引として登録されます(ヘルプ「明細の自動登録ルールを設定する」更新日2026年9月8日)。証憑については「ファイル自動記帳β」があり、AIがファイルボックス内の領収書や請求書を解析して取引を登録し、日付または金額が読み取れない場合は「エラー・確認待ち」として残す仕組みです(ヘルプ更新日2026年10月16日)。

マネーフォワード クラウド会計の「連携サービスから入力」画面では、取引明細にシステムが勘定科目を自動提案した仕訳候補が表示され、利用者が登録します。自動仕訳ルールの「自動登録」にチェックを入れた候補は「クイック登録(β)」で一括登録できますが、利用者が実行する操作が必要です(ヘルプ「『連携サービスから入力』画面の使い方」更新日2026年10月8日)。2026年3月17日には、仕訳の税区分をAIが点検する「消費税区分チェックエージェント」が一部の士業事務所向けに提供開始されました(同社プレスリリース)。

2社に共通するのは、AIの出力をそのまま帳簿に確定させるか、人が確認してから確定させるかが利用者側の設定で決まる点です。設定項目とヘルプのページ名はfreee会計とマネーフォワード クラウド会計のAI機能の記事で整理しました。

経理の工程ごとのAIの適用範囲

次の表は、月次の経理業務を工程ごとに分け、AIに任せやすい処理と人が判断・承認する処理を編集部で整理したものです。

工程AIに任せやすい処理人が判断・承認する処理
証憑の受領・保存画像からの日付・金額・取引先の読み取り、ファイル名の付与電子帳簿保存法の要件を満たす保存方法の選択
仕訳の起票科目・税区分の候補作成、定型取引の起票案例外取引の処理、資産計上か費用処理かの判断、仕訳の承認
入金・支払の消込入金明細と請求データの突合候補の作成差額や一部入金の処理、不明入金の調査
経費精算のチェック規程の上限額や重複申請の一次チェック規程外の支出の承認、交際費等の税務上の区分
月次決算前月比・予算比の増減の抽出、増減理由の下書き引当金・見積りの計上、増減理由の確定
開示資料・説明資料文章の下書き、表記ゆれの検出記載内容の確定、基準・条文の確認
監査対応依頼資料の一覧化、過去回答の検索回答内容の確定、監査法人との協議
出所:編集部の整理

右の列にある処理は、会計上の見積りや判断を含むか、社外への説明責任を伴います。AIの出力を材料として使うことはできますが、確定させるのは権限を持つ担当者です。月次決算の増減分析で生成AIに渡すデータの作り方と出力の検証手順は、月次決算の増減分析に生成AIを使う手順の記事にまとめました。

経理担当者が領収書を手に、モニターの仕訳一覧の1行を確認している場面
AIが作った仕訳案を担当者が証憑と見比べて確認する場面(イメージ)

AI-OCRで読み取った証憑の保存区分

AI-OCRで読み取った証憑を電子データで保存する場合、電子帳簿保存法上の区分は、証憑を紙で受け取ったかデータで受け取ったかで決まります。紙で受け取った請求書や領収書を読み取って電子データで保存し、紙を廃棄するのはスキャナ保存です(電子帳簿保存法第4条第3項)。メールの添付ファイルやWebサイトからのダウンロードで受け取ったPDFは電子取引の取引情報にあたり、所得税・法人税の保存義務者は受け取ったデータそのものを保存しなければなりません(同法第7条)。

AI-OCRが読み取った日付・金額・取引先は、どちらの区分でも検索項目として使えますが、読み取った値だけを保存する方法は認められません。国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)の問36は、取引情報を確認してその情報だけをサーバに自ら入力する方法を、電磁的記録の保存として認めていません。読み取り結果を会計ソフトに登録したあとに元のPDFを削除する運用は、この認められない方法に該当します。

受け取り方区分根拠条文詳しい記事
紙で受け取り、読み取って紙を廃棄するスキャナ保存法第4条第3項、施行規則第2条第6項スキャナ保存要件の記事
PDF等のデータで受け取る電子取引データの保存法第7条、施行規則第4条電子取引データの保存要件の記事
出所:電子帳簿保存法第4条第3項・第7条、同法施行規則第2条第6項・第4条(e-Gov法令検索)をもとに編集部が整理

IT統制ガイダンスとAI事業者ガイドラインの記載

経済産業省が令和6年12月25日に改訂した「システム管理基準 追補版(財務報告に係るIT統制ガイダンス)」は、第Ⅱ章にコラム「AI導入での留意点」を置いた資料です。このコラムは、業務プロセスでAIを利用する場合、ブラックボックスで出力が生成されるというAIの特性を踏まえ、出力の正確性・妥当性などのチェック・承認をプロセスに組み込むことが必要であるとしています。AIの出力を人が承認してから確定する運用と、AIの出力がそのまま確定する運用のそれぞれで残す記録は、経理のAI活用と内部統制の記事で扱いました。

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)は、AI利用者に求める事項として、AIシステム・サービスへ個人情報を不適切に入力しないよう注意を払うこと(U-4)と、機密情報等を不適切に入力しないよう注意を払うこと(U-5)を挙げています。取引先名や金額を含む証憑、公表前の決算数値を汎用の生成AIサービスに入力する前に、サービスの規約で入力データの保存期間と学習への利用の有無を確かめ、使ってよいサービスを社内ルールで決めておくことが前提です。

導入前に決める項目

確認の範囲と記録の残し方

AIが作った仕訳案を全件確認するのか、一定金額以上だけを確認するのかを決めます。あわせて、確認した件数と修正した件数を月ごとに残す様式を用意してください。修正のない月が続くと確認が承認ボタンを押すだけの作業になりやすいため、上長が一部を抜き取って見直す手順も決めておくと、後から運用を説明できます。

AIに与える権限

AIエージェントを会計ソフトに連携させる場合は、AIが使うアカウントを担当者のアカウントと分け、仕訳を承認できる権限を付与しないでおきます。承認権限を持つアカウントでAIが起票した仕訳が、承認待ちになるのか承認済みとして登録されるのかは、会計ソフトの設定画面で確かめてください。

証憑の保存方法

AI-OCRで読み取った紙の領収書を電子データで保存し、紙を廃棄する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。要件はスキャナ保存要件の記事で整理しています。

上場準備企業での監査法人との協議

上場準備中の会社では、AIを使う業務を内部統制の評価範囲に含めるかどうかが、監査法人との協議事項です。協議に使う一覧の作り方はAI活用と内部統制の記事で扱っています。

よくある質問

AI経理を導入すると経理担当者は不要になりますか。

入力と照合にかかる時間は減りますが、仕訳の承認、見積りを含む決算処理、監査法人や税務当局への説明は担当者が行います。AIの出力を確認する作業が新たに加わる点も、人員計画に織り込んでください。

生成AIに仕訳を作らせてもよいですか。

仕訳案の作成に使うことはできます。生成AIは数値の正確性を保証しないため、仕訳案の件数と合計金額を元の明細と照合し、担当者が承認してから登録する手順を組んでください。

無料の生成AIサービスに請求書の画像を入力してもよいですか。

入力したデータの取扱い(学習への利用、保存期間、保存場所)はサービスと契約形態によって異なります。取引先名や金額を含む証憑を入力する前に、利用規約と社内の情報管理規程を確認してください。

会計ソフトのAI機能と汎用の生成AIはどう使い分けますか。

仕訳の起票や消込は、会計データと連携する会計ソフトのAI機能を使うと、件数の照合や承認の記録を残しやすくなります。汎用の生成AIは、規程の要約、問い合わせへの回答案、説明資料の下書きといった文章の作成に向いています。

参考資料

  1. 経済産業省「システム管理基準 追補版(財務報告に係るIT統制ガイダンス)」令和6年12月25日(第Ⅱ章コラム「AI導入での留意点」) (最終確認 2026年10月20日)
  2. 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編(概要)令和8年3月31日(第5部 AI利用者に関する事項 U-4、U-5) (最終確認 2026年10月20日)
  3. 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(e-Gov法令検索)第4条第3項・第7条 (最終確認 2026年10月20日)
  4. 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」令和8年7月(問36) (最終確認 2026年10月20日)
  5. 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」令和8年7月 (最終確認 2026年10月20日)
  6. 明細の自動登録ルールを設定する(freee ヘルプセンター、更新日2026年9月8日) (最終確認 2026年10月20日)
  7. ファイル自動記帳βでファイルボックスから取引を自動記帳する(freee ヘルプセンター、更新日2026年10月16日) (最終確認 2026年10月20日)
  8. 「連携サービスから入力」画面の使い方(マネーフォワード クラウド会計サポート、更新日2026年10月8日) (最終確認 2026年10月20日)
  9. 『マネーフォワード クラウド会計』、AIエージェント「消費税区分チェックエージェント」を一部の士業事務所向けに提供開始(株式会社マネーフォワード、2026年3月17日) (最終確認 2026年10月20日)

本記事は2026年10月20日時点で確認できた法令・資料に基づいています。個別の取引への当てはめは、顧問税理士や監査法人と確認してください。

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AIを使う経理業務のRCM・業務記述書 記載例

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